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研究プロジェクト(超高速ビデオカメラ)

光・電子・情報処理融合アーキテクチャによる超高速ビデオカメラ

超高速カメラは,プラズマ発光,結晶破壊,放電のように短時間に起こる物理現象などの単発観察に不可欠です.我々は,(1) マルチアパーチャ光学系,(2) 当研究室独自の高時間分解CMOSイメージセンサ画素技術であるラテラル電界電荷変調器(LEFM),(3) 最新の高効率サンプリング技術として知られる圧縮センシングが協調する,光・電子・情報処理融合型アーキテクチャにより,超高速ビデオカメラの時間分解能を飛躍的に高める研究をしています.今までに時間分解能5ナノ秒(イメージセンサとしては世界最速)で連続32枚撮影を達成しており,さらに1桁速い時間分解能500ピコ秒以下の実現に向けて研究開発を進めています. 従来の超高速向けイメージセンサは,センサ上に100枚程度の画像を一時記憶する画像メモリをもっています.画素アレイからそこに高速にデータを転送し,撮影後にチップ外に読み出すことで(バースト読み出し),時間分解能50ナノ秒程度が実現されていました.しかし,時間分解能を決める画像メモリへのデータ転送時間は容易には短縮できません.我々の方式では,画素自身が画像メモリとして機能するためデータ転送が存在せず,画素内の電荷転送時間のみが時間分解能を決めるため,高速化に適しています.また,単発撮影と繰り返し蓄積撮影の両方に適用できる自由度をもつとともに,圧縮センシング技術の併用により,アパーチャ数(従来方式における画像メモリの記憶可能枚数に相当)の2倍程度の連続画像を復元できるため,効率的な撮像が可能です.(図2)

図1:光・電子・情報処理融合型アーキテクチャに基づく超高速カメラ.
図2:従来方式との比較.我々の方式は画像を一時記憶メモリに転送する必要がないため,高速化に適しています.

マルチアパーチャ超高速CMOSイメージセンサ

これまでに,5×3要素のレンズアレイに対応したCMOSイメージセンサを試作し,空気のブレークダウンプラズマの単発動画撮影を行っています(図3).各アパーチャは64×108画素とシャッタ制御回路から成り,最大128ビット長の時系列2値符号化シャッタを記憶します.横5個×縦3個配置したアパーチャは外部トリガにより一斉に撮影を開始/停止し,1回以上の任意の回数だけ符号化シャッタを繰り返し出力することで,画素毎に電荷領域における時間多重化信号を得ます.図4はマルチアパーチャ画像とそこから再構成した高速時系列画像を示しています.パルス幅8ナノ秒,波長532ナノメートルのNd:YAGレーザを空気中に集光すると,空気分子が電離して白色のプラズマ発光が起こります.圧縮センシングでは,アパーチャごとに異なる時間的ランダムシャッタを適用して撮影するため,そのパターンに応じて撮影される画像が微妙に異なります.図4に示すように,単発のプラズマ発光に対し,アパーチャ数と同じ15枚の時間多重化画像が同時に得られます.コンピュータ上で逆問題を解くことで復元した32枚の画像のうち,画像#12〜#18にプラズマ発光が捉えられています.集光点の手前に大きなプラズマが発生し,レーザ光がそれにより遮られるために集光点には弱いプラズマが発生していることがわかります.1コマの長さは5ナノ秒で,これはフレームレートに換算すると2億枚毎秒になります.

図3:空気のブレークダウンプラズマの観察系.
図4:空気のブレークダウンプラズマ生成・消滅過程の単発観察結果.

応用分野

超高速カメラ,ロングレンジTOFカメラ,時間分解顕微鏡.

文献

  1. F. Mochizuki, K. Kagawa, S. Okihara, M. -W. Seo, B. Zhang, T. Takasawa, K. Yasutomi, and S. Kawahito, "Single-shot 200Mfps 5x3-aperture compressive CMOS imager," ISSCC Dig. Tech. Papers, pp. 116-117 (San Francisco, Feb. 23, 2015). [LINK]
  2. F. Mochizuki, K. Kagawa, S. Okihara, M. -W. Seo, B. Zhang, T. Takasawa, K. Yasutomi, and S. Kawahito, "Single-event transient imaging with an ultra-high-speed temporally compressive multi-aperture CMOS image sensor," Optics Express (accepted). [LINK]
  3. F. Mochizuki, K. Kagawa, M. -W, Seo, T. Takasawa, K. Yasutomi, and S. Kawahito, "A multi-aperture compressive time-of-flight CMOS imager for pixel-wise coarse histogram acquisition," in Proc. of 2015 Int’l Image Sensor Workshop, pp. 178-181 (Jun., 2015). [LINK]

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